家族信託という制度をご存知ですか?
本人が元気なうちに契約を結び、将来判断が難しくなっても、信頼する家族が財産の管理や必要な手続きを行えるようにしておく、認知症などに備えるための、比較的新しい仕組みです。
先日、この家族信託の手続きを終えたので、そのことについて書いていきます。
母がアルツハイマー型認知症と診断されてから、7年が経ちました。
薬を飲み、デイサービスにも通いながら、今も一人暮らしを続けています。
大きな変化はないように見えても、やはり少しずつ認知症は進行していると感じます。
生活面では、その時々の母の様子を見ながら、ケアマネジャーさんに相談し、一つひとつ対応してきました。
そんな中で、ずっと私の心に引っかかっていたことがありました。
それは、「母の資産をどう守っていくか」ということです。
認知症が進み、本人の判断能力がないと判断されると、預貯金や不動産の手続きが難しくなることがあると聞いていました。
母には自宅のほかに、祖父から譲り受けた土地が少しあります。
その土地が道路拡張計画の対象になっているので、今後さまざまな手続きが必要になるかもしれません。
そのとき、母が一人で対応するのは難しいでしょう。
もし、資産が凍結されてしまったら、母の生活費の収入源の一つが入ってこなくなるかもしれない。将来、もし施設入居になった場合の資金に困るかもしれない――そんな漠然とした不安がありました。
正しい知識がないことで、不安だけが募っていく、そんな状態でした。
だからこそ、ちゃんとした知識を身につけて、母の代わりに私が様々な手続きを進められるようにしておくことは必要なことだとも思っていました。
それは、母のためだけではありません。
何かあったときに「何もできない」と慌てなくて済むように、私自身が安心して母を支えていくための準備でもあると感じています。
実は、母が認知症と診断された7年前にも家族信託を検討したことがあります。
でも、その頃の母はまだしっかりしていて、「そんなものは必要ないよ」と笑っていました。
その当時は家族信託にかかる費用に驚き、母の認知症が、これ以上進むことも想像もできなかったので、私自身も「必要ない」と思い、そのままになっていました。
しかし今回、主治医の先生から
「するなら早い方がいい。今がギリギリかもしれません。2年後、3年後では難しくなる可能性があります。」
と言われたことで決心しました。
家族信託は、本人が判断できるうちに準備しておくのが理想だと言われています。
でも、現実はそう上手くはいきません。自分の資産を家族といえども他の人に管理してもらうことを、すぐに受け入れられる人は少ないのではないでしょうか?
そのタイミングを見極めるのは、本当に難しいものだと感じました。
実際に今でも、母は銀行の暗証番号を覚えていて、必要な時に自分で現金を引き出しています。
そして、銀行のATMを使ってお金を下ろすという、今できていることを、私たちの判断で、母から取り上げたくないという気持ちもありました。
元気だからまだ大丈夫だと思っているうちに時間は過ぎ、気づけば「今がギリギリかもしれません」と言われる時期になっていました。
今回の経験を通して、
親の資産をどう守り、どう活かしていくのかを元気なうちから家族で話し合っておくことの大切さを実感しました。
方法は家族信託だけではありません。
「まだ大丈夫」と思えるうちに話し合っておくことが、親にとっても、家族にとっても、将来の安心につながるのだと思います。
次回は、実際に家族信託の契約をして感じたことや、手続きの流れについて書いてみようと思います。


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